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罪の双子
「罪の双子・ジェミニ」

これは遠い昔の話。

とある村には、双子の姉妹がいた。
黒の髪と、紫紺の瞳を持った彼女たちは、村人たちから「聖なる子」と呼ばれ、愛されて育った。

しかし、平和は永遠ではなかった。
ある晩、村を襲ったのは人型の魔物たちだった。
全身に鎧を着込み、全ての攻撃を遮断する魔物。バリアを貼りながら、草木を巻き込む竜巻を発生させ、目元が真っ黒に塗りつぶされた魔物。死体の骨が意識を持ったかのように動き出し、人々を蹂躙する魔物。

いずれも何者かに操られているかのような、ぎこちない動きをしている魔物だったが、軍事設備の乏しいこの村では致命的な影響を受けた。

大人たちは次々に倒れ、逃げ惑う中、まだ幼い双子も追い詰められた。
倉庫の木箱の中に隠れてどれだけ時間が経ったのか、空腹でめまいがしてどうしようもなかった。
空腹に耐えかねて飛び出した彼女たちの前には、打ち捨てられた魔物の屍が横たわっていた。

誘われるままに、倒れた魔物に噛みついた。
肉の味も匂いも、吐き気を催すほどおぞましかった。
しかし、食べなければ死ぬと確信を得られる程に、双子は飢えていた。

ただ強欲の限りに、暴食を繰り返す。

燃えるような力が体中に満ち、彼女たちは、魔物たちを次々と喰らい尽くしていった。

数日して、その双子は魔物を食らいつくした。
かくして、町は救われた。その姿を見たものからは、魔物を食らう神の子として崇められさえもした。

やがて、故郷へ戻った二人を、母が涙ながらに抱きしめたその瞬間だった。
ふわりと、抱き寄せた母の身体は、まるで枯れた木の枝のように軽かった。
……何かがおかしい。
姉妹は顔を見合わせた。
だが、遅かった。
彼女たちの腕の中で、母の命は既に、静かに絶えていた。

力が制御出来ていないことに気が付いたのは、この時だった。村人たちは恐怖した。
「神の子などではなかった」「化け物だ」――村人たちは彼女たちを地下へと幽閉した。

それから幾年、地下深く、双子は闇と孤独の中に生きた。
悲しみの中で憤怒を覚えた。村を救った私たちに、なぜこんな仕打ちを受けなければならないのか。
救われの身でありながら、私たちとは違い太陽の光の下で生きる村人たちに、嫉妬した。

時折、腕に覚えのある冒険者たちが「報酬」を求めて彼女たちを討ちにきた。
だが、双子は、強すぎた。
魔物を食らい続けた力、そして日々高まる闇の衝動。
彼女達は次々と襲撃者たちを打ち倒した。そして空腹に抗うことはできず、数少ない「食料」をむさぼった。

そして双子は傲慢に、そして怠惰になっていった。
時が止まったかのように外見が変わらず幼いままの双子は、もう自分がただの人間ではないことに目を背けつつも薄々感づいていた。
彼女たちは、誰かに心を寄せることもなく、ただ無感情に、過ぎ去る時間だけを数えた。

ある日、複数の冒険者パーティにより会議が行われていた。事実、討伐に向かった冒険者は全員帰ってきていない。
結論として、討伐は不可能だと悟った。そして一つの結果を導いた。「神器を用いて、双子を封じるしかない」と。

数十人の冒険者たちが集い、死力を尽くして双子を追い詰めた。
ついに一本の剣が、彼女を封印した……かに思われた。

剣は紫に輝き、自律的に冒険者たちに立ち向かった。

双子は泣き叫んだ。痛い。痛い。痛い……
剣が自分の意思に背いて宙を舞い切りかかる。その行動一つ一つに、激しい痛みを感じるのだ。
冒険者は必死になって、神器を双子に刺し込む。一本、二本、三本と……

五本の剣と、一つの黒の籠により、双子はようやく封印された。
封印された双子がいつ暴れだしても被害が最小限に済むように、扉を作り鍵をかけた。

鍵には魔法がかけられ、遠くスラム街を越えた崖の上へと投げ捨てられた。


双子は痛みに泣き叫ぶ。
五本の剣は、封印を拒み続けた。
一つ一つの動作ごとに、狂おしい痛みが走る。

幾年、幾年も──

涙はとうに枯れ、双子はすべてを憎む顔つきに変わった。

ときおり、冒険者が訪れることもあった。
痛みから解放してほしいと願ったが、誰一人として双子に傷をつけることはできなかった。


冒険者が死ぬたび、扉の鍵は魔法によりスラム街を超えた崖へと転移するだけだった。

彼女たちの願いは、ただ一つ。
「この扉を開け、私たちを殺してくれる誰か」が現れること。

 

一人の銀髪の女性が、神器を引き抜いた。

双子は直感する。
この人は、今までの誰よりも強い。

暴れ狂う五本の剣を、決死の力で一本だけ止めた。
双子は直感する。この人は他の誰よりも強い。
5本の暴れまわる剣を、決死の抵抗で1本だけ動きを止めた。

初めて、双子は本当の自分の力を知る。
「「ツインノヴァ・バースト」」

体からあふれるエネルギーを自らの意思で止めることはできない。

生命の限界が近づいた時、体がみるみる再生していく……
長年枯れていた涙が、一滴零れ落ちた。

こんなにも死にたいのに、この体は自分自身を殺させてくれないらしい。
しかし銀髪の女性はそれでも、私たちに襲い掛かる。なにかを察しているかのように……

そしてついに、その時が来た。
ただ全てから、私たちはようやく救われた。

天国に行くのか、地獄に行くのか……
想像とは裏腹に、双子の魂は双剣となり形を変えた。痛みは一切なかった。
互いの感覚が分かる、思考も、感情も。痛みで塗りつぶされていた先ほどまでが嘘のように、この姿はただただ心地よかった。苦しみも、孤独も、飢えも、痛みも──すべてが、今はただ静かな力に変わっていた。


わたしたちは、彼女に向けて、心の中でそっとささやいた。

「ありがとう。わたしたち、あなたのために、たたかうよ。」


銀髪の少女は剣となった私達を見る。
彼女の目的がなにかは分からないが、双子の魂は本来の力をその体──剣に込めて……彼女と共に旅をすることとなった。

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